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南米・パラグアイマーケティング

現在、南米の市場は英語圏に変わる新しいマーケットとして、投資や企業進出といった分野で、世界各国で注目を集め出している。
しかし、国の存在は知っていてもその国の国民性や、それに合わせたマネジメント、教育、ニーズなどの分野においては未開のジャングルと大差はない。このページでは、南米の労働コストやマネジメント、その他、マーケティングに関わる分野について触れていきたい。
様々な事を調べていくと、やはりパラグアイは他の南米の諸国に比べて投資のコストパフォーマンスが異様に高い。現大統領、オラシオ・カルテス氏の経済政策は成功しているといっていいだろう。
しかし「投資に向いている」という理由だけでは足踏みをするものだ。このページがその意思決定を後押しするものになればうれしい。

パラグアイに投資が集まる理由(製造業・労働コスト)

パラグアイは現在、世界中の投資家から注目を集めているといって過言ではありません、スペイン、ウルグアイ、ペルー、メキシコ、アメリカ、そして日本。など名だたる国が「パラグアイの投資に関心がある」というコメントを残しています。
その理由は様々です。例えば銀行金利、外国資本に寛容、シンプルな法制度、税金の優遇、などあげればキリがありません。
その中でも大統領オラシオ・カルテス氏は「安価なエネルギー、若くて安い労働力、食料」がパラグアイへ投資する最大の利点であると訴えています。
今回は、ジェトロが作成した「投資コスト比較 2017」という資料を参考にして、南米におけるパラグアイの労働コストが如何に安いのか、またその理由について紹介していきます。

やっぱり安いパラグアイの労働力

このグラフはアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジルの製造業における平均的な労働コストの表です。
ご覧の通り、パラグアイとウルグアイの労働コストはずば抜けて低いといえます。この理由は後述する名目賃金の上昇率も関係しているのですが、とにかくパラグアイで働いている労働者の多くが気にしているのが最低賃金の上昇です。
パラグアイではおよそ40%の労働者が最低賃金で働いています。反対に他の南米の国で最低賃金が月の給料であると示している国はありません。これは何を表しているのか?これは国民の意識と雇用者の意識を表しています。
一考してみましょう。最低賃金とはなにか。これは国が定める最低限支払わなくてはならない賃金の下限です。もちろん国によって基準はマチマチですが、法律は基本的には国民を守り、最低の生活水準を守るように制定される必要があるので、この最低賃金を最低限の生活をする為に必要な金額としましょう。
では、最低賃金で働くということはどういう意味か?分かりやすいように反対の事を考えて見ましょう。企業が最低賃金よりも高い給料を提示する理由はもちろん「人材の確保」です。
企業は人から出来ています。であればよりよい人材が増えれば企業は当然、今よりも利益を生み出すようになり、成長する事ができます。先進国であればこの良い人材は競争によって獲得されていき、よい人材がいなくならないように福利厚生を良くし、マネジメントを良くし、働く環境を改善するわけです。
つまり、最低賃金でいい。という事はこの人材獲得における競争が起きていないという事です。それで雇用主も被雇用者も満足しているわけですね。当然競争がなければ雇用主も辞めさせない努力を怠り、被雇用者も自分を高める努力を怠るようになります

パラグアイに残るシコリ(コネクション)

次に注目したいのが一般ワーカーと中堅技術者の差です。パラグアイとブラジルはこの間に4倍から5倍もの給料差が発生しています。これは格差を明確に表しているといえます。
では、この格差がどこで生まれているのか?日本であればこれは学歴であったり資格の有無であったりします。しかし、パラグアイではどの大学を出てもだいたい新卒は最低賃金で雇われる事がほとんどです。
そうするとやはりわからなくなります。全員が同じラインでスタートするのに、その給料差はどこで生まれるのか?それが学歴でも資格でもなければなんだろうか。自頭の良さや、仕事が出来るという事では評価されていなさそうです。
なぜそういいきれるのか?仕事ぶりを評価しれくれるのであれば、いつまでも最低賃金に甘んじているのがおかしいからです。当然、自分が頑張っているのに他のワーカーと同じ給料であれば不満を漏らすのが当たり前だからです。
という事はこの給料差は仕事でも頭の良さでもない、他のファクターから生み出されています。つまり「コネ」ということです。
なんでもかんでも「コネ」で決定してしまうのであれば努力を怠って当然ともいえます。なぜなら頑張りが評価されないので、そうなれば「じゃー、初めから適当にやろうか」という事になります。

パラグアイ・アルゼンチン、中間管理職格差

また、注目したいのがアルゼンチンとパラグアイの中間管理職の賃金比較です。このグラフは単純に「なるほど、パラグアイとウルグアイの賃金は安いんだ」と思うだけのものでなくて非常に国の様子を表しているといえます。
パラグアイ・ウルグアイで問題になっている事の一つに「中間管理職の不足」をあげる事ができます。パラグアイは特に、仕事の離職率というものが非常に高く、若者にとって今いる会社は「さらに大手に行くステップ」という認識が強くあります。
つまり、その会社に属して一生を終えるという労働者が非常に少ない傾向にあります。「パラグアイ人は仕事で嫌なことがあるとすぐに辞めてしまう」というのは昔から言われている事ですが、その影響は労働力の不足だけでなくて、中管理職。つまりマネジメントする能力を持っている人の欠如を生み出します。
一方、アルゼンチンという国は大学でもマネジメントや経営学科という分野についての研究が進んでいてこの層は会社でも非常に重宝されています。その為に、中間管理職の給料が高いわけです。
パラグアイには全く持ってマネジメントという物の考え方はありません。その分野における人材の育成が急務であると考えたJICAやアスンシオン大学ではパラグアイ版MBAコースを作る動きをみせていますが、現時点ではありません
私の感覚で言えばこの概念や人材が育成されなかった背景にあるのは、パラグアイの組織・労働者がフラットな組織体制や関係性を好む傾向にあるからだと考えます。
これはとても不思議な感覚といえます。なぜならパラグアイ人やパラグアイにいる日系の方はどちらかというと自発的に行動するよりは、こうしてください。これをしてください。と言われてから動き出すのを好むように見えるからです。
けれど、頭ごなしに命令されるのは嫌がります。この原因がどこにあるのかは定かでありません。例えば組織というもののあり方、つまりピラミッド構造に会社が成り立つという感覚がないのか。組織の動き方、組織の動かし方というものがわからないのかもしれません。
この点は、日本でも問題になっていますね。例えば部下は自分のものであるかのように命令を下さす上司がいたり、仕事の関係性がある前に一人の人間と関わっているという感覚の欠如です。会社の外にでれば初めての人に丁寧な言葉遣いをする。関わる人に嫌われないような態度で接する。などはもちろん守れるのに、会社に入ると途端に偉くなってしまう方もいますね。
日本でも同じですが、特にパラグアイでマネジメントをする場合は、なるべく丁寧な物の言い方をすると物事が円滑に進むように思えます。もちろん、怒る時はキチンと叱らなくてはいけません。

評価制度が発達していないパラグアイ

アルゼンチンとパラグアイの中間管理職における格差というものは、見た目以上に大きな問題であるとお分かりいただけると思います。
つまり、パラグアイにはまだ仕事の良し悪しを決める評価制度そのものが発達していないという事です。私の友人に国立大学に勤める方がいらっしゃいますが、その方いわく、パラグアイでは「効率に関するコンサルテーションは意味を成さない」といっていました。
これを表している事例が一つありますが、その方はジェルバマテ(マテ茶)を作っている工場の社長に効率を3倍にも4倍にも高めることができる機械の導入を進めたそうです。しかし、社長は渋い顔をした後に一言
「そんな機械に投資するよりも安い従業員を一人雇ってスイッチを押させたほうが良い。」
といったそうです。なるほど、パラグアイの企業が持っている従業員に対する認識とはこういった感覚なのです。そして、被雇用者もその仕事で満足するから雇用されるというわけです。
私も日本を離れてだいぶ経つのでこの感覚がおかしいものである。という認識を持てなくなりました。政治も国民の頭が良くなりすぎると謀反を起こされても困るので教育に力をいれない。被雇用者は難しい事を言われるよりも単純な行動をずっとしているほうがいい。雇用者は自分の手足となって言う事を聞く人間であれば優秀でなくても十分。
これを悪循環と捉えるか、はたまたトランキーロ(おだやか)な習慣であると捉えるかは難しい問題です。その為、事実だけを捉えて物をいえば、やっぱりパラグアイという国は進出を考える製造業者にとっては天国のような国といえます。

製造業における労働コストを比較してみました。

今回の記事をまとめると、中で働いている人間の意識や能力といったものを意識しなければ、特に製造業などの分野で日本から南米に進出を考えた時に、明らかに一番コストパフォーマンスが高いのがパラグアイだといえます。
一人の人間を最低賃金で雇用できる環境は、まずもって他の国にはない機会といえます。そして実際に働く人間も従順な人間が多いパラグアイは、現地のルールや習慣を遵守していれば投資のコストパフォーマンスは南米のほかの国とは比較になりません

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